シルビア
会場へ入ってからは、1時間、2時間、3時間とひたすら会場内に展示された商品を見て回る。
大きめのホールいっぱいにずらりと並んだ各社のブース。
それはメーカーごとに様々なテーマで作られた部屋のようで、華やかさやナチュラル感、ポップ感……どれもそのメーカーの持つ色を、存分に発揮している。
「うーん、どこもシンプル、エレガンスって感じばかりですね」
「まぁどの会社も打ち出すものは、流行りというか定番的に売れるものに偏るからね。でも展示の仕方はメーカーによって全然違うから参考になるかな」
会場内は基本的に撮影厳禁。というわけで、目に付いたアイデアや商品を全てくまなくメモをとり、パンフレットやカタログなども手当たり次第に貰っていく。
メモ帳を抱え、バッグいっぱいにパンフレットを詰め込み、私の手元はすでに荷物でいっぱいだ。
「あっ、あのネックレスかわいい〜!宇井さぁん、シルバーとゴールドどっちが麻美に似合うと思います?」
「織田さんはやっぱりシルバーかな」
「やっぱりそう思います?麻美もシルバーみたいな繊細な色のほうが似合うと思ってたんですぅ」
一方で織田さんはあの調子だし……。
仕事のために物を見る、というよりは自分のことしか考えていないらしい。
そんな彼女の相手を望がしてくれるから、こちらは仕事に集中できるけど。
でも、ずーっと望にベタベタして、望も嫌な顔もせずにへらへらして……なんかムカつく。
いや、ムカつく意味がわからないんだけど。けど、なんか、胸の奥がモヤモヤするというかなんというか。
まぁ望からすれば、ああして可愛い子がベタベタしてくれるなら悪い気しないんだろうけどさ。
あーもう、望のことを考えるとまた仕事に集中出来なくなる!
「いらっしゃいませー、ご覧ください」
モヤモヤとした心を抱え、ちょうど足をとめたのは、とある雑貨メーカーのブース。
そこは木製の床に白い壁、とシンプルかつナチュラルな雰囲気漂う作りとなっている。
メインはガラスやウッドの食器などの生活雑貨なのだろうけれど、一番に目を引くのは壁面にずらりと並んだ色とりどりの造花。
緑の葉やつる、ガーベラやダリアなどの淡い色から濃い色の花まで、飾られた数多くの花々はまるで本物のようにリアルで美しい。