シルビア
会場端のフードコートへやってくると、そこでは壁際で私を待つ3人の姿がすぐに見つけられた。
……いた。
「お待た……」
「本当、ありえないと思いませんー?あの態度!」
『お待たせ』と声をかけようとしたものの、私の声は織田さんの甘い声にかき消されてしまう。
「ま、まぁまぁ」
「だってちょっと宇井さんの手が当たっただけじゃないですかぁ!なのにあんな大げさに怒ったりして」
その言葉から、彼女が不満そうに話している内容が誰のことなのかがすぐ分かる。
『あの態度』と言うことから、先ほどの私の望への反応に対して文句を言いたいのだろう。
「でも別に凛花さんも怒ったわけじゃないと思いますけど……」
「怒ってましたよぉ。あの人すぐきつい言い方するじゃないですか〜」
「まぁ……そうですけど」
って葛西さん、フォローしようとしたはずが反論出来なくて頷いちゃってる。悪かったわね、言い方きつくて!
「この前私にもきつく言ってきて……年下だからっていつも当たるんですよぉ。麻美、本当にこわぁい」
って、この前って『分からないなら聞いて』って話をしたときのこと?
いやいやいや、きつく言ってなんていないし、年下だからって言ってるわけじゃないから!
ていうか、そんなこと言い出す織田さんのほうがこわいから!
泣き真似をするように望に甘える織田さんに、心の中で全力でツッコミを入れる。
本当はここで『いやいやいや!』って訂正しに行ければいいんだろうけど……。
それをやったところで、彼女とぎこちなくなったり、それが仕事に影響してしまったらを考えるとなにも言えない。
ましてや男性には人気があるそうだから、『織田さんをアクセサリー事業部がいじめてる』なんて噂が立ったら……それこそ、部署として今よりいづらくなる。
それらを思い、言いたい言葉もぐっと飲み込んだ。