シルビア
それから昼食を済ませ、また展示の見学に歩き回り……時刻は、16時すぎ。
日が暮れるのが毎日徐々に早くなっていく秋の夕方らしい、オレンジ色が空を染めだす頃。ようやく展示会を見終えた私たちの姿は、会場最寄の駅前にあった。
「ふー……あれこれ見てるうちにあっという間でしたね」
「うん。結構参考になるところも多かったし、来て良かったかも」
「ならよかった。そう言って貰えたら武田さんも草葉の陰から喜んで……」
「いや、死んでないから。生きてるから」
そう何気なく話しながらも、一日中歩き回り足はもうクタクタ。
営業マンで歩き回るのが仕事の望はわりと平気そうだけれど、日頃あまり足を使わない私や葛西さん、織田さんは疲れきった顔で息を吐いた。
「じゃあ、今日はこれで解散で。お疲れさまでした」
「お疲れさまでしたぁ」
葛西さんと望は地下鉄、織田さんはバス、私はJRということで、それぞれに駅で手を振り別れる。
ふぅ……疲れた。
せっかくだしどこか寄り道していこうかとも思ったけれど、歩きすぎで足は痛いし、大量のパンフレットやサンプルでパンパンになった紙袋を持って歩く気力もない。
というわけで、帰ろう。そう決めると、駅の中へと向かい歩いて行く。
どうせこの歳になれば、祝ってくれる人のいない誕生日なんてただの1日にすぎない。
普通に過ごして、普通に眠って、明日だってまた変わらない1日。
言い聞かせるように、納得して、諦めて。人通りの多い改札を通り抜けた。