シルビア
◇「今更だね」
白とベージュで色を統一した、2LDKの私の部屋。
アイアンのベッドに白いシーツ、ベージュ色のマットと、差し色で薄ピンク色のクッション。
可愛げのない本人とは裏腹に、部屋の雰囲気は女の子らしく、イメージと違いすぎるこの部屋は親しい人以外には見せられないとつくづく思う。
その部屋の出窓に飾られた、真っ赤なバラの造花。
望から貰ったそれは、私の部屋の雰囲気には少し不似合いだけど、今日も外の光を受けてキラキラと輝いている。
隣には、指輪の入った青いケースを並べて。
ある日の朝、まだ寝巻き姿の私はそれを眺めながら、コップの中の牛乳を一口飲む。
……ていうか、望はどういうつもりなの?
もうとっくの前に別れた元彼氏、なのにああやって誕生日プレゼントとか渡したりして。
そりゃあ、おめでとうと言われたり、プレゼントを貰えるのは嬉しい。
けど私だったら、うやむやに別れた相手の誕生日を祝うだなんて気まずくて出来ない。
ってことは……同僚として、ってこと?
本当、なにを考えているかがわからなくて、むかつく。
考えれば考えるほどよくわからない、はっきりしない。そんな気持ちに、私は中身を飲み干したグラスをテーブルにダンっと置いた。
……けど。
そのまま向かうのは、部屋の端にある小さなクローゼット。
コートやジャケットが沢山かけられた中に置かれている引き出しを開け、ごそごそと中をあされば出てきたのは白いスカート。
『たまにはスカート履いてみてもいいかもね』
むかつく気持ちも嬉しい気持ちも、素直に言葉には表せない。
だからこういうところは少しだけ、素直に従ってみてもいいかも、なんて。
そんなことを思いながら、そのスカートへ足を通した。