シルビア
「え……どうしたんですか、いきなりふたりとも」
「え!?いや、あの……つ、つい!感情的になっちゃって!」
「あ、あはは!すみません!」
ま、まずい……またやらかしたー!
望とふたり笑ってごまかすものの、3人の目は怪しむようなじろりとした視線を向けた。
「あっ俺ちょっとトイレ!じゃ!三好さんごゆっくり!」
「あっコラ!!」
そんな場の空気から逃げ出すように、望は飲みかけの缶コーヒーを手に足早にその場を去る。
さ、先に逃げるなんてずるい……!
望がいなくなったことにより、3人の視線は逃げ遅れた私へと集中する。
「なーんか怪しいですよね、ふたりって」
「え!?そ、そうかなぁ!?」
「うんうん、ただの同僚って雰囲気とは違う気が……」
「いやいやいや!全然!ただの同僚だし!さっきのもお互いつい言いすぎちゃっただけだし!」
黒木ちゃんに続いて葛西さんも、私に疑いを向ける。それを必死に否定していると、武田さんはもの珍しそうに言った。
「でも珍しいなぁ、宇井がああした言い方するなんて」
「え?」
「あ、確かに。宇井さん結構きつめの言い方してましたよね。いつもなら笑ってそれとなく流したりするタイプなのに」
……言われてみれば。
付き合っていた頃、ああして喧嘩することは度々あったりもしたけれど、基本的に望は滅多に怒らない。
普段は優しくさとしたり、丸め込んだりして、怒るのは本当に時々。