シルビア



「ついきつい言い方になるくらい、譲れないものがあったのかな」



……譲れない、もの。

武田さんのその言葉に、深い意味があるのかどうかはわからない。

だけど先程の望の言葉を思い出すと、またその言葉がずしりとくる。



『浮気してたかなんて分かんないじゃん?』

『相手はちゃんと一筋だったかもしれないじゃん、それを信じられないってどうなの』



それって、つまり信じてほしいということ?

浮気なんてしていなかった、一筋でいてくれたということ?



……どうして、今更。

なら、あの時否定してよ。全て説明してよ。



笑ってごまかすのは得意なくせに、聞きたいことや肝心なことはひとつも教えてくれない。

かもしれない、じゃない。

私だけだった、って。言い訳がましくてもいいから、きちんと話してよ。



信じてほしい気持ちを、譲れないと思ってくれているのなら。





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