シルビア




「合コン?」



11月も半ばに差し掛かろうとしている、ある日の午前。



晴れにも関わらず日差しが当たらぬアクセサリー事業部のフロアは、暖房ひとつすらもなく今日も寒い。

そんな室内の端で、デスクに座りブランケットで寒さを凌ぐ私に、今日も黒ぶちの眼鏡姿の葛西さんは大きく頷く。



「はい、明日。この前合コンひらいてあげますって言ったじゃないですか!それで、ネクサスの社員何人かに声かけたら意外と集まったんですよ〜」



そういえば先日、『凛花さんのために合コンひらく』とか言っていた気がするけど……本当に声かけたんだ。



葛西さんは意外と社交性が高く誰とでも仲良くなれるタイプの人だ。いじられやすいけど敵を作るタイプの人でもないし。

そんなところを生かして、社内の男性社員や女性社員を集めたのだろう。

けれどそんな彼の努力を思っても、私の顔は嫌そうに歪んだ。



「『凛花さんが来る』って言ったら来たいって言ってた子もいましたよ!意外とモテるんですねぇ」

「ちょっと、意外とってどういう意味よ」

「いやぁ、俺だったら『凛花さんが来る』って聞いてもあんまりテンションあがらないなぁとか思って……いてててて!!」



さりげなく失礼なことを言う彼に、私はパンプスのヒールでその茶色い革靴の足元をぐーっと踏む。



「ま、とにかくいろんな部署の男女みんなに声かけておきましたから!これを機に彼氏はもちろん友達も増えるといいですね!」

「……はぁ、分かったわよ」



余計なお世話だし、合コンに行ってまで恋人が欲しいわけでもない。

けれど確かに、他の部署で知り合いが少ないのも事実だし……これを機に男女どちらも知り合いが増えたら仕事も多少はやりやすくなるかもしれない。



そう考え渋々頷くと、葛西さんは「よし、決まりっ」と笑って私の席を離れる。



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