シルビア
「お茶、俺が運ぶよ。人数分もあると少し重いでしょ」
「へ?あ……うん、……ありがとう」
ぼそりと呟いた一言に、その顔は一層嬉しそうに笑みを見せると、私の手元からコップの並んだトレーを奪う。
その為にわざわざ、フロアから来てくれたんだ。
……悔しいけど、やっぱり、望も優しい。その言葉をのみこむように、口の中のクッキーをもぐもぐと食べた。
「あと、今日の合コン上手くいくといいねぇ」
「え!?な、なんで知ってるの!?」
「葛西さんから『宇井さんも彼女いないって言ってましたよねー?』って誘われたから」
か、葛西さん……!
なんで望まで誘うかなぁ!本当余計なことばかり!
出来れば合コンに行くなんて、望には知られたくなかったのに……。あれ、でも望も誘われたってことは。
「い……行くの?」
「うん、もちろん。俺も出会いほしいしね〜」
へらへらと頷くその姿に、胸の奥がズキ、と痛む。それを隠すように、こぶしをきゅっと握った。
「あ、もちろん邪魔はしないから安心して?凛花もそろそろ本気で男見つけなきゃまずいだろうし」
「へ?」
「このまま生涯ひとりでいるのも大変じゃん?老後のことまで、よーく考えておかないと」
って、この男は……本当に。
「っ……余計なお世話!!」
「ぎゃっ!!」
失礼にもほどがあるその一言に、私は怒りをぶつけるようにその足をダンっ!!と踏みつけると、猫のような悲鳴をあげる望を置き去りに給湯室をあとにした。