シルビア
それから1日が経ち、迎えた翌日の夜19時。
会社から1駅分歩いた先にある新宿の繁華街にある居酒屋では、にぎやかな声が響き渡っている。
「乾杯ー!」
「かんぱーいっ」
少し広めの個室に座る、本日の参加者である10名ほどの男女は、そう和やかにビールやウーロン茶の入ったグラスを合わせた。
私と同じくらいから少し年下らしい面々は、同じネクサスの社員ではあるけれど、どこかよそよそしい。
聞けば経理部から商品開発部、人事部まで皆部署はバラバラで、お互いあまり面識がないのだという。
そんな人たちをここまで集めるなんて……葛西さんは本当に顔が広いのだと感心してしまう。
「三好さん、でしたっけ。アクセサリー事業部の」
「あ、はい。初めまして」
「へぇ、美人さんですねぇ!葛西さんから『うちの30歳独身の凛花さんのために合コンを』って誘われたんで、どんな人なのかなって思ってたんです~」
葛西さん、会ったことない人にまでまたベラベラと……!
笑顔は崩さないものの、怒りについビールのグラスを握る手にミシ、と力が入る。
一方で私の斜め前の席に座るウーロン茶を手にした望は、男性社員であるひとりに絡まれている。
「そういえば宇井さん、アクセサリー事業部の営業担当やってるんすよね!どうっすか?女の子に囲まれて仕事って」
「うん、楽しいよ~。やっぱ男ばっかりの中より、可愛い子と仕事出来る方がいいよねぇ」
「あはは、『仕事なんだから相手が男女どちらでも違いはないよ』って言ってた武田さんとは大違いだなー!」
向こうは向こうで本当に軽い男……。
あまり親しくない人の前でも変わらず、いつもの調子でへらへらとする望に、つい冷ややかな目になってしまう。