シルビア



ちら、と向かいの席の望を見れば、望はこちらを気にすることもなく引き続き女の子と話している。



「私、唇柔らかいってよく言われるんです〜」

「本当?触っていい?あ、本当に柔らかいねぇ」



しかも今度は、女の子のグロスの塗られた唇を指先でツン、と触れたりして……。



って、本当チャラ男!!

あれじゃ確かに、落とせると思われるわ!

寧ろあんなにチャラいのに落ちないってどういうこと!?って気になるよ!少し織田さんの気持ち分かっちゃったよ!



その態度にムッカアアアと込み上げる苛立ちを流し込むように、グラスの中のビールをグビグビと飲み干した。



なによ、へらへらして。そうやって他の子に触れたりして。

いいけどさ!別に、他人だし!ただの元カレだし!勝手に彼女でも作って勝手にイチャイチャすればいい!

って、なにまた気にしてるんだか。私!



気にしない、どうでもいい、そう思いながらわざわざ視線をそらして、気にしている自分がムカつく。

けど、こっちの気持ちも知らないでへらへらしている望は、もっとムカつく。



……知らなくて、当然だけどさ。

いつも、この気持ちは裏腹でぐちゃぐちゃだ。





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