シルビア
皆で話しながら飲むうちに、お酒の力も手伝ってかあっという間に打ち解けた。
それからその場は大いに盛り上がり、時刻は夜23時を過ぎた頃。
「じゃあ、そろそろお開きにしますか!」
「二次会カラオケ行く人〜」
充分すぎるほど飲み食いを終え、アルコールで赤くほてらせた顔で居酒屋を出る。自分を含め、皆足取りはふわふわだ。
「三好さん、この後どうします?二次会行く?」
「あ、ううん。私はやめておく」
今日は木曜日。明日も普通に仕事だ。
何年か前までは深夜遅くまで飲んでも全然大丈夫だったけれど、ここ数年はダメだ。酔い潰れて寝て、記憶はなくなるし二日酔いはひどいしで、仕事にならない。
そんな私から見て、「カラオケ行くぞー!」と盛り上がっている皆は、歳はあまり変わらないのに元気だなぁ、ととても眩しい。
「あーん、宇井さ〜ん、よっぱらっちゃったぁ」
すると居酒屋前の出入り口で、聞こえてきたのは、『宇井さん』の名前と女の子の甘い声。
「飲み過ぎだよ。大丈夫?帰れる?」
「むり〜歩けない〜」
見ればその子は、飲み会中もずっと望にくっついていた若い子。
大分酔っ払ってしまっているらしく、望に支えられながらべったりと体をくっつけている。
本当に酔っているのか、いわゆる作戦なのか……。それよりも気になってしまうのは、彼女を支えるように肩を抱く、その大きな手。
「じゃあ俺、この子送るから。ここで」
「はーい、お疲れ様でーす」
望はそう皆に声をかけると、迷うことも躊躇うこともなく、そのまま彼女と夜の街へ歩き出した。
「あれは絶対、お持ち帰りコースだよな」
「ね〜。彼女宇井さんにかなりアピールしてたし、宇井さんもまんざらでもなかったんじゃない?」
そんなふたりの後ろ姿に噂をする声を聞きながら、私はひとりその場に立ち尽くしたまま。
……お持ち帰り、ね。
まぁ、そうなるよね。気の合う男女がお酒が入った状態でいれば、そりゃあそうだ。
しかも相手はあのチャラ男。そこで止まるようなやつじゃない。
結局いつまでもこの場所で止まっているのは、私ひとりだ。