シルビア
「三好さん!」
その時、後ろから響いたのは名前を呼ぶ大きな声。
この、声……。
振り向けばそこには、こちらへ向かい駆けてくる、望の姿がある。
「の、ぞむ……?」
なんで、望がここに……?
驚きながら見る私に、後ろでは佐田くんの「チッ」という舌打ちが聞こえる。
「なんすか宇井さん、邪魔しないでもらえます?」
「大変大変!さっきの子が向こうで吐いちゃって!三好さん助けて!」
そんな佐田くんのことなど気にすることもなく、望は私の腕を引く。
「は!?なんで私!?」
「女の子のことは女の子に任せるのが一番でしょ!とにかく来て!ね!」
「なっ、ちょっと……」
そしてゆっくり説明もせず、瞬く間に私を引っ張りその場を歩き出してしまった。
戸惑いながら振り向けば、背後にはあまりに一瞬のことに、ぽかんとその場に立ち尽くす佐田くんの姿が残される。
けれど、望は後ろを気にする素振りもない。ただひたすら、私の腕を力強く引き歩いて行く。
いきなり現れてなんなの……!
本当に、もう、どうしてこうもタイミングがいいの。
いつも、いつも。こうして救ってくれるその姿が、嬉しいと思ってしまう。
泣きそうに、なる。