ユウウコララマハイル
「聞いてよ。この間初めてお見合いしたんだけどさー、断られちゃったんだよ。こっちから断る前に先手打たれてさぁ」


声色は明るいのに嘆息が漏れるような喋り方だ。
心なしかアカネの肩が下がっているように思える。


「どんな人だったの?」
「私より五歳年上で、ちょっと頭が薄かったなぁ。そこを隠せばまぁまぁ、顔がいい。性格も柔和な感じでよさそうなのに、バツがついていない。これってさ、なにか問題があって今まで独身だったってことでしょ」
「どうしてそう穿った見方するの? 私は会っていないからわからないけど、仕事に熱心だったからってこともあると思うよ」
「そうかもしれないけどさー」


アカネの返事は歯切れがわるい。


「お見合いは誰かの紹介だよね?」
「うん、うちのお母さんの」
「ああ、うん、なんとなく落ち込んでいる理由がわかった」


アカネの母親は市で主催している婚活のボランティアをしている。
ナツミも昨日仕事中に「紹介したい人がいるんだけど」と話しかけられた。
世話好きの彼女からしてみればナツミは立派な対象者なのだ。
それは自分の子供たちも同じなのだろう。
そして他人であるナツミよりも厄介であることは明白だ。


「三十代になったらねー、あははーってお母さんが持ってきた話蹴ってたんだけど、そうも言ってらんなくなったからね。一度受けたら最後だとは思ってたんだけど、次はアレだよ、スポーツ婚活だってさ。正当なお見合いが無理なんだから、次はこれでしょって。嫌だよ、私! ソフトバレーとかしたくないんだけど!」


一緒に行かないかと言外に誘っているのがわかるので「頑張って」と伝える。
やはりそれだけでは不満だったようで、唇が尖るように歪んでいる。
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