ユウウコララマハイル
「私は今のままでいいし、興味ないし」
「そんなこと言って、またまた」
「しつこいよ、アカネ」
「だって気になるじゃん。ナツミいつもはぐらかすから。詐欺だよ、詐欺! 前に電話したときも、その前電話したときも、その前も前も前もそういう話スルーして。今回はそうもいかないんだからね! 三年もこっちに帰ってきたこと隠してたんだから、今日こそは話してもらうからね!」


別に隠していたわけではないという言い分は言いわけにしか聞えないだろう。


「ナツミだって、そういった話舞い込むようになる歳じゃない。同級生に会うとさ、結婚した? まだ? って話になるし、当時の担任だってまだなのかーって、誰かお前に紹介してやれよって話になるじゃない。それって私だけなの? 違うでしょ。わかるこれ? ナツミならわかるでしょ? もしわからないんだったら、アレだよ、ナツミわけあり女ってひと括りで見ちゃうからね。不倫してたり、結婚したい相手がいたのに逃げられちゃったとか、そんな感じで思うからね。アンタの容姿で彼氏ナシとかも信じられないし、ナイとするならよっぽど私よりナツミの性格がわるいって思っちゃうよ。ナツミが男だったらよかったのに、そうしたら私がそういうところ全部目を瞑って結婚してあげるのに」


ナツミがなにか言わない限りまだまだ続きそうである。
饒舌すぎるアカネに今回は逃れられそうもない。


「はいはい、わかったよ。話すから」


アカネの瞳は満ち足りた子犬―――というより成犬のようだ。
ナツミはこの顔に、実は弱かったりする。


「私の場合、同居人がいるから」
「同居人? それって男だよね? いつから?」


好奇心旺盛な犬を前にナツミは「この話だけはしたくなかった」と後悔した。
今日の会話はいずれアカネ母にも伝わり、各所に伝播するのだろう。



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