ユウウコララマハイル
滴るほどの汗を掻きながら小井土邸に戻ると、「遅かったわね」と出迎えてくれた。
「ひとまず休んで」と通された部屋は冷房がよく利いた居間で、天井付近の壁に扇風機が設えられ回っていた。
そして仏壇に茶箪笥。
ショーケースのような茶箪笥の中はもちろんのこと、その上まで物が飾られている。
そのほとんどがキャラクターのような置物とフォトスタンドで、その中の写真は白黒からカラーまでと様々だ。


「こういった部屋、物珍しいですか? 最近のおうちってこうじゃないですもんね。日本でも畳のお部屋、少なくなりましたし」


カケルの視線を追いかけるように小井土は部屋を見渡す。


「日本でもって、俺はそんなグローバルなヤツじゃないです。れっきとした日本人なので。祖母の家もこんな感じだったなって、少し郷愁に浸ってしまいました」


それは失礼しましたと小井土は頭を下げた。


「無理もないです。俺こんな外見なのでよく間違えられるんです。これで肌が黄味がかっていたら、違ったのかもしれないですけど」


カケルの肌は透き通るように白い。
周りがどんなに陽に焼けて黒くなっても、赤くなりもせず白いままだ。
日焼け止めを塗るようなこともないし、肌が強靭に強いわけでもないけれど、色だけは変わらない。
学生のときは奇異の目を向けられることも多くて「鬼」や「妖怪」などとからかわれることもあった。


小井土はカケルの一挙手一投足を見守っているような視線を投げかけてくる。
居心地がわるいので「写真を見てもいいですか?」と訊ねる。
すると小井土は「その、金色のフレーム」と薦めてきた。
覗いてみると四人の子供が二列になって写っている。
前列は園服らしきものを着た女の子で、後列は小学校のジャージ姿の男の子がふたりずつ。
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