ユウウコララマハイル
「カツトシくんから訊いたけど、古沢さんは中村ナツミちゃんと友達なんだって?」


カツトシというのはマスターのことだ。


「ナツミちゃんの実家ってうちのお隣なの。窓から見えると思うんだけど」


振り返って窓の外を見る。
自転車で前を通ったとき、どこにでも金持ちはいるんだなと思った。
その家はコンクリの打ちっぱなしの二階建てで、デザイナーズマンションのような作りだった。
その家を取り囲む塀も門扉も豪邸を匂わすように肉厚だ。
そんな家が中村の実家だったとは。


「向かって左がうちの娘と息子で、右側がナツミちゃんの兄妹よ。ふたりとも学年が同じだったから、よく遊んでいたの」


写真に写る四人の子供たち。
小井土の子供たちはふたりとも活発そうな印象を与える笑顔を向けていて、中村たちはどこかぎこちない笑顔を浮かべている。


「―――中村に、兄がいたんですね」


知らなかった。


そういえば中村から、家族のことなんて一度も聞いていなかったかもしれない。



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