ユウウコララマハイル
広瀬は夫が撮った写真をポストカードや栞などのアイテムにして、主婦業の傍ら販売をしている。
「アスズシキダ」は地元の方々のホームメイド作品を展示販売しているスペースがあり、カフェに目もくれずそこで買い物をするお客さんも少なくない。
その中でも旦那が手がけた四葉のクローバー関連アイテムは評判がよく売れ行きも好調で、広瀬はその補充に来たのだ。


「レモンパイ、これが最後です」


カケルが広瀬の手元に置くと、マスターが透かさず「最後の一個なんて、ラッキーですね」と声をかけた。


「なぁ、カケル。ハヅキさんがカケルに預かって欲しいものがあるそうなんだよ。アイス珈琲入れてあげるから、カケルもこっち」


マスターは広瀬と並ぶようにコースターを置いた。
カケルは脳のどこかにある嫌な予感センサーが働くのがわかった。
先日の洗濯機のような大物は預かるものではないから、たとえばぬいぐるみの修理だとか栞制作だとか、そういった細々としたものを思い浮かべる。
しかしカケルと同じくらい広瀬の旦那も手先が器用なはずだ。


クリーム色をさらに淡くしたような髪色で、宝石の色の瞳。
生まれつき獣にでも引っかかれたような傷が背中に二本ある。


カケルが知っている限り、この外見を持っているのは広瀬の旦那を含め四人。
その四人とも手先が人並み以上に器用という共通点があるのだ。
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