ユウウコララマハイル
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見た目がわるかったのか、それとも冷たいデザートが人気だったのか、予定数よりも多くいちじくのパウンドケーキが売れ残ってしまった。
真智の好意で保冷剤と一緒にそれを持ち帰り、中村に食べさせることにした。
残り物とはいえ味は確かなので、この上なく幸せと中村の頬は最初から最後まで落ちっぱなしの様子だ。


「ほんとラッキーだよね! 仕事が終わって甘いものが食べられるなんて」


帰宅時間がカケルより二十分ほど早い中村は、その短時間で夕食を作るように心がけているらしい。
食後のデザートが並ぶことはほとんどない。


「買って食べると食費がかさむもんなぁ」
「それもあるけど、真智さんや古沢の食べてるとなんか物足りなくなっちゃうみたいでさ」


この間アカネと食べたランチも困ったんだよねと中村は頬杖をついた。


「そうそう、それも困ったことだけど、もっと困ったことがあった」


中村は頬杖をついた手をスライドさせて額を押さえた。
疲れも溜まっているように見える。


「うちにさぁ、捨てハムスターがいるの。あれ、どうにかなんないかなぁ」


中村の話によると昨日水槽に入ったハムスターが店頭に捨てられ、それがなぜか自分の担当する売り場に置いてある、ということだ。
中村の勤める書店は規模が小さいからか「本」「その他雑貨(文具)」とざっくり社員の担当がわかれていて、中村は前者の担当だ。
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