ユウウコララマハイル
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「―――終わった」


カケルは縮こまった身体を解き放つように伸びをして、テーブルに突っ伏した。
職場の定休日、その半日、全てを広瀬から預かった鳴らないオルゴールに費やした。


いくら手先の器用なカケルでもプロではないのだから直る保証はない。
もしだめだったら諦めると先方は言っていたけれど、引き受けたからには精一杯やる。


初めて直すオルゴール。
まずインターネットで情報収集。


鳴らないオルゴールは十八弁と呼ばれるごく一般的なもので、似たようなものが均一ショップでも売っている代物だ。
十八弁とはシリンダーについている突起物(ピン)の数で、音色を奏でるドラム型の根幹のこと。
そのシリンダーに破損がないので、鳴らない原因はゼンマイのほうにあり、時間が経って磨耗し空回りしたのだと思われる。
だったら、そのシリンダー以外を変えてしまえばいい。


オルゴールを買い求めるために先週下見していた雑貨店に赴いた。
午前中ゆっくり寝ていたせいで、帰宅したのは午後三時を回っていた。


テーブルに修理道具を並べ、以前中村からもらった天使の羽根を視界に入る位置に置く。
そうしてから手をあわせる。


「これから楽しい時間の始まりです」


うまくいきますように。


そう念じながら目をゆっくり見開く。
作業の開始だ。
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