ユウウコララマハイル
中村が箸をキッチンから持ってきている間に、カケルは弁当をテーブルに並べた。
デミグラスハンバーグ弁当と温玉牛丼弁当。
どちらも夜に食べるのには高カロリーだが、それぞれに半額シールが貼ってあった。
中村はどちらを食べるのだろうと悩んでいると、早々にハンバーグをさらっていった。
お互いに手をあわせて「いただきます」と言う。
中村はつけあわせのニンジンを頬張ってから「終わったの?」と訊いた。
「お陰さまでなんとか」
手元にそのまま放置していたオルゴールのゼンマイを巻く。
本来ならオルゴールは癒しの音を奏でる。
しかしなんだかこの曲は人の気持ちを沈めるような、物悲しさを爪弾く音色に感じてしまう。
「―――……トロイメライ」
消え入りそうな声で中村が呟いた。
「それがこの曲のタイトルか?」
「たぶん、あってると思う。トロイメライはシューマン作曲の「子供の情景」第七曲のことだった気がする」
「中村、クラシック詳しかったっけ?」
まったくと中村は首を横に振った。
「小学生のときに夢中で読んでいた本にトロイメライのオルゴールが出てきたの。それで知ってるだけ。それを真似して、修学旅行か遠足かは忘れちゃったけど、お土産で買って帰ったことがあるんだ―――不思議だよね、そんな昔のこと、今も覚えてるなんて」
そう言って中村は湯気の立たない白いご飯を食べた。
デミグラスハンバーグ弁当と温玉牛丼弁当。
どちらも夜に食べるのには高カロリーだが、それぞれに半額シールが貼ってあった。
中村はどちらを食べるのだろうと悩んでいると、早々にハンバーグをさらっていった。
お互いに手をあわせて「いただきます」と言う。
中村はつけあわせのニンジンを頬張ってから「終わったの?」と訊いた。
「お陰さまでなんとか」
手元にそのまま放置していたオルゴールのゼンマイを巻く。
本来ならオルゴールは癒しの音を奏でる。
しかしなんだかこの曲は人の気持ちを沈めるような、物悲しさを爪弾く音色に感じてしまう。
「―――……トロイメライ」
消え入りそうな声で中村が呟いた。
「それがこの曲のタイトルか?」
「たぶん、あってると思う。トロイメライはシューマン作曲の「子供の情景」第七曲のことだった気がする」
「中村、クラシック詳しかったっけ?」
まったくと中村は首を横に振った。
「小学生のときに夢中で読んでいた本にトロイメライのオルゴールが出てきたの。それで知ってるだけ。それを真似して、修学旅行か遠足かは忘れちゃったけど、お土産で買って帰ったことがあるんだ―――不思議だよね、そんな昔のこと、今も覚えてるなんて」
そう言って中村は湯気の立たない白いご飯を食べた。