ユウウコララマハイル
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入浴剤のために作られた文庫小説がある。
入浴剤と書き下ろし小説がセットになったそのシリーズは普段小説を扱わない玩具メーカーが企画したもので、今一番旬の作家六人を器用しそれぞれを担当した。
売れ行きにばらつきはあったものの、再注文を頼む作品もあったくらいで、おおむね好評だった。
今平台を占領しているのは、その類似品となるのだが売れ行きは相当にわるい。


『天使の休息』『老人の成長』『勇気の息吹』『鋭利な殺意』『元気の発掘』


息の長い古参作家を起用しリレー方式で書いており、それぞれでも読めるが、五作そろうと謎が解けるというものだ。


誰が買うんだよ、これ。
表紙にも毒々しさが滲み出ていて、正直若い子向けではない。
市内に二校ある高校の丁度中間地点にある我が書店は、比較的学生利用者が多いのだ。


その上、発注した覚えがない。


しかもこれは買い切りなのだ。


書店に並ぶ商品のほとんどは委託販売だ。
それを委託制度と言い、売れなかったら仕入れ値で返品できる。
ただし返品しすぎてしまうと、それだけ売れる本が配本されなくなるという落とし穴もある。
それとは違い買い切りは文字通り買い取ってしまうもので、売れなくても返品できない。


これはチーフの陰謀なのだろうか。
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