ユウウコララマハイル
チーフを問い詰めてやろうと思ったものの、ふたりしかいない本の担当社員が同時にいることは月に片手で数えられるほどしかない。
これは休暇をあわせない、必ずひとりは出勤しているようにするという配慮で、今度チーフに会うのは棚卸の日になっている。
パソコンでメール画面を立ち上げてみたが、確認してもナツミが注文していないのだから必然的な答えしかもらえない。
そのことがわかりきっているので結局閉じた。
売れないと嘆くだけなら簡単で、それだと時間の無駄だ。
「……――ちゃん、いつもの本」
「はい、いらっしゃいませ」と慌てて顔を上げると天使屋のマスターが立っていた。
ナツミは客注棚からマスターが定期購読している漫画雑誌を取り出す。
「お時間は大丈夫なんですか?」
「今の時間お客さま、ひと段落してるからね」
腕時計を確認すると、針は四時を示している。
「そうそう、ナツミちゃんにお礼を言いたくってね」
「お礼を言われるようなこと、した覚えないですけど」
二五〇円ですとレジ打ちをして、雑誌を袋に入れる。
マスターは「栞のこと」と呟きながら財布から小銭を取り出した。
「ナツミちゃん、休日返上で四葉のクローバー見つけてくれたんだろ。アイツその熱意に負けて作っただけだから、お礼はナツミちゃんにとカケルが受け取らなくて」
これは休暇をあわせない、必ずひとりは出勤しているようにするという配慮で、今度チーフに会うのは棚卸の日になっている。
パソコンでメール画面を立ち上げてみたが、確認してもナツミが注文していないのだから必然的な答えしかもらえない。
そのことがわかりきっているので結局閉じた。
売れないと嘆くだけなら簡単で、それだと時間の無駄だ。
「……――ちゃん、いつもの本」
「はい、いらっしゃいませ」と慌てて顔を上げると天使屋のマスターが立っていた。
ナツミは客注棚からマスターが定期購読している漫画雑誌を取り出す。
「お時間は大丈夫なんですか?」
「今の時間お客さま、ひと段落してるからね」
腕時計を確認すると、針は四時を示している。
「そうそう、ナツミちゃんにお礼を言いたくってね」
「お礼を言われるようなこと、した覚えないですけど」
二五〇円ですとレジ打ちをして、雑誌を袋に入れる。
マスターは「栞のこと」と呟きながら財布から小銭を取り出した。
「ナツミちゃん、休日返上で四葉のクローバー見つけてくれたんだろ。アイツその熱意に負けて作っただけだから、お礼はナツミちゃんにとカケルが受け取らなくて」