ユウウコララマハイル
あの当時の中村のアパート、カケルが寝かされていたリビングは埃が目立たない程度に奇麗にしてあった。
けれどやはり、引越しの手伝いをしたときに驚いたのだけれど、一室だけ、自分のプライベートスペースだけが異様に散らかっていた。
今中村が使っている洋間のように。


これってだらしないっていうか、ある種の強迫観念なのかもしれない。
自分の部屋だけは汚さなくてはならないっていう。


考えすぎかもしれないけれど。


「こういう質問、絶対はぐらかすからなぁ」


自分の住むアパートが見えてきた。
二階の左隅の電気が点いていて、中村がすでに帰宅していることがわかる。
着くとカケルは折り畳み自転車をかついで階段を上がった。
それを玄関脇に置いて、ドアを開ける。


「古沢お帰りー。私さぁ、今作り始めたばかりなんだよね。本当に申しわけないんだけど、先、風呂入ってもらえると助かるよ。そうすればあとがスムーズだし」


中村はカケルを少しも見やることなくキッチンの前に立っている。
どうやら仕事が終わらなかったらしい。
日頃の習慣で、食事のあとに風呂でないとしっくりこないのだけれど、しょうがないので中村の言葉に従うことにする。
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