ユウウコララマハイル
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「迎えに行ってきました」


出産予定日間近になったマスターの奥さんの代わりに真智が次女の手を引いて入ってきた。
店内にいた数名の客がカランコロンと鳴ったドアベルに顔を向けている。
カウンター席にいた初老の常連客は「イッちゃんお帰り」と手を振ったけれど、次女のイツキは真智の手をしっかり握って俯いている。
ほかの客はイツキの見慣れない外見に驚いている様子だ。


真智がイツキと視線をあわせるように跪く。


「イツキちゃん、玄関からのほうがよかったですか？」


表情のない顔で真智が訊く。
真智は感情が表に出ないだけでなく、普段からほぼ無表情で過ごしている。


イツキは首を振って、約束を破るように手を放した。
そして厨房の脇に入っていく。
そこは母屋と繋がっているのだ。
すみませんと謝るのは筋違いだとは思うけれど、珈琲を運んでいたカケルはテーブル席の女性客ふたりに謝った。
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