ユウウコララマハイル
「あのお嬢ちゃんの髪は地毛なの、よね?」


戸惑いと好奇心のふたつを宿した瞳がカケルを見上げている。


「綺麗な色でしょう、俺と同じです」


巻き毛の女性は「あら、ほんと」と口に手を当てて目を丸くしている。
大人と子供では、子供のほうが印象強く映るものだ。
カケルとは違い、鮮やかな緑色の瞳をしているせいもあるとは思うけれど。


「今は見えないけど、ここのマスターも同じ髪色なのよ。さっきのお子さんはそのマスターのお子さん」
「そうなの! お兄さん若いから、お兄さんの子供だったらどうしようかと思ったわ」


巻き毛とストレート髪の女性が会話を進めている。
カケルはテーブルに珈琲を置いて、早々に引き上げる。


またドアベルが鳴った。
入ってきたのはジャンプを脇に抱えたマスターで、「あら、ほんとだわ」とカケルの後ろから声が上がった。
ストレート髪の女性は以前来たことがあるのだろうなと、カケルは記憶の引き出しを捜したけれど行方不明だ。
マスターは店内の客を見渡して「いらっしゃいませ」と歯を見せて応えている。
光度を落とした午後の陽射しが、マスターの髪を白銀に照らしている。
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