ユウウコララマハイル
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玄関に鍵はかけてあった。
窓も閉まっている。
キッチンもリビングも荒らされてはいない。
取っ散らかっているのは自分の部屋だけだ。


「俺の目がおかしいのか、それとも極度に疲れているのか」


目を擦っても、頬を抓っても、首を傾げても、見える景色は同じだ。
襖の奥にしまってあったはずの布団や衣類も畳の上に散らばっている。
ただカケルが趣味で集めている裁縫道具や工具が入ったケースはあるべき場所にある。
犯人がいるとするならば、ここに目的のものがないことがわかりきっていたのだろう。


中村も今日仕事が休みのはずだ。


書店勤務である中村は休みが定まっていない。
年中無休だからか、それとも本人の予定がないからなのか、シフト担当者が都合のいいように組んでいる。
火曜定休の自分と休みがあうのは月に一度あるかないかで、今日はそのある日だ。


「アイツ、なに探してんだ?」


それよりもアイツ、俺が休みの日はこんなことばかりしているんじゃ?


考えてみても答えが出ず、代わって不安が湧き上がってくる。
ただ自分も人のことが言えないので叱るわけにはいかない。
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