ユウウコララマハイル
県道はほどよく車が流れている。
その流れに沿って視線を動かすと公園橋だ。


車のエンジン音がカケルの前に停まる。
「お世話になりましたー!」と幼稚園教諭がイツキの手を引いて、カケルに受け渡した。
そして流れに沿ってバスは発車する。


イツキがカケルの服の袖を引っ張った。


ああ、これか。


カケルはぶっきら棒にくまのぬいぐるみを渡した。


「直すの、遅くなってごめんな」


イツキはぎゅっと力強く抱きしめると、なにか違和感があったのか、確認するようにぬいぐるみを見た。


「パンちゃん、おけしょうしてる?」


パンというのが、このくまのぬいぐるみの名前だ。
マスターいわく、パンダの「パン」ではなく、パンダの形をしたパンダパンの「パン」から名づけたのだそうだ。
なんだかよくわからない。


カケルは頭を掻いてから、子供の相手をするならこうだったよなと、イツキの視線にあわせるようにしゃがんだ。
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