ユウウコララマハイル
「先生が怒ったのはどうしてなんだろう。考えてみたか?」


園帽子を被った、白髪が揺れる。


「かんがえてない。でもイツキわるくない」
「俺はその状況を見てないからなんとも言えないけど、理由がなくて怒ったのだとしたら、先生がわるいよな。そうしたらイツキは確かに、わるくないよ。ただね、相手の気持ちをわかってやんなきゃだめだよ」


イツキは視線を地面へと落とした。


「オーたんとケンちゃんがけんかして、かいだんからおっこちそうになってた。イツキ、それをみていただけなの」
「そうか、だから先生はイツキを叱ったんだね。ケンカを放っておいたから。少し遅かったら、オーたんとケンちゃんが落ちて怪我をしていたかもしれない」
「でもイツキ、ケンカとめられないよ」
「ケンカを止めなさいと先生は言っているわけじゃないと思うよ。危ないなと感じたら、すぐに大人を呼べってことだ。今度からできるよな?」


イツキは首を縦にも、横にも振らなかった。


「イツキね、しゃべるとわらわれるの。パンちゃんがいたときは、きにならなかったんだけど。だってパンちゃんはともだちだから。ともだちはパンちゃんいがいいらないの」


しゃくり泣きはじめたイツキの目元をカケルは持っていたハンカチで拭った。
いつもズボンのポケットに入っているハンカチは、中村の手によってアイロンがけがされている。
中村は自分の部屋以外のことに関してはマメなのだ。
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