ユウウコララマハイル
「俺はね、友達がひとりもいなかったんだ。イツキ、いじめってわかる? 俺はねこの外見でいじめられることが多かったんだ。最初のうちは歯向かってたんだけど、だんだんと意味がないことに気づいて、相手にしなくなった。そうしたら相手も俺に興味をなくして、本当にひとりぼっちになった」
イツキが「つらい?」と怯えるように訊いた。
カケルとイツキの外見はよく似ているから、自分もいずれそうなるのかと、不安がっているのかもしれない。
「辛かったんだと思う。でも辛くない振りをし続けた、俺はわるくないって。そうやって不幸な自分に酔ったら、友達だけじゃなく、誰も俺の周りにはいなくなってしまった」
そこで中村に会ったのは幸運なのだ。
「ナツミのことはわかるよな? ナツミおねえさん」
イツキの歳から考えるとナツミおばさんと呼ばせてもいいような気がするけれど。
「うん、わかるよ」
「ナツミおねえさんがね、鼻っ柱を折―――そんな俺を叱ってくれたんだ」
そうでなかったら、気づかなかったことだったと思う。
「イツキのパンがお父さんに洗われて可哀相な姿になったこと。パンが俺の家に入院したこと。先生に叱られたこと。あと、バトンを落としちゃったこと。ほかにもいっぱいあるんだよな。それはたまたま不運が続いてしまっただけだと思うんだ。全部、たまたまなんだ。だからパンがいても、いなくても、起きてしまうことなんだよ。俺の場合もそういった不運が続いたことで、それが不幸だと思ってしまった。不運が続く自分こそが、不幸なんだって。そんなわけがないのに酔ってしまった」
イツキが「つらい?」と怯えるように訊いた。
カケルとイツキの外見はよく似ているから、自分もいずれそうなるのかと、不安がっているのかもしれない。
「辛かったんだと思う。でも辛くない振りをし続けた、俺はわるくないって。そうやって不幸な自分に酔ったら、友達だけじゃなく、誰も俺の周りにはいなくなってしまった」
そこで中村に会ったのは幸運なのだ。
「ナツミのことはわかるよな? ナツミおねえさん」
イツキの歳から考えるとナツミおばさんと呼ばせてもいいような気がするけれど。
「うん、わかるよ」
「ナツミおねえさんがね、鼻っ柱を折―――そんな俺を叱ってくれたんだ」
そうでなかったら、気づかなかったことだったと思う。
「イツキのパンがお父さんに洗われて可哀相な姿になったこと。パンが俺の家に入院したこと。先生に叱られたこと。あと、バトンを落としちゃったこと。ほかにもいっぱいあるんだよな。それはたまたま不運が続いてしまっただけだと思うんだ。全部、たまたまなんだ。だからパンがいても、いなくても、起きてしまうことなんだよ。俺の場合もそういった不運が続いたことで、それが不幸だと思ってしまった。不運が続く自分こそが、不幸なんだって。そんなわけがないのに酔ってしまった」