ユウウコララマハイル
▧❏◙◘■□◆◇◚◇▧❏◙◘■□◆◇◚◇
調子の外れた鼻歌を風に靡かせながら、カケルは自転車を押し公園橋を渡っている。
足元を照らす控えめな照明は、相変わらず過去を誘ってくる。
それすべて忌々しいものばかりで、足取りをひたすら重くさせるけれど、今日はなぜか、一味違う。
気分がいいのは、ちょっとした優越感。
イツキは店に帰ってからも、カケルにべったりだった。
商談を終えたマスターが両手を差し出しても抱きつこうともせず、カケルの手を握っていた。
完全にふて腐れたマスターはイツキよりも幼く見え、叔母に「だらしない」と叱られていたくらいだ。
一日の終わりが、とても、和やかだった。
途中厨房に入れずやきもきしたけれど、それさえも今に至るまでの、伏線のようなものだったに違いないと思える。
そんな心の余裕。
余白を残して一日を終え、明日を迎えるのは、幸せなことだ。
幸せなのだ。
幸運がなくても。
公園橋を渡りきる。
アパートを見上げるといつも中村が待っている部屋に明かりはついていない。
わかってはいたものの、気落ちした溜め息が出てしまう。
いつものように自転車を担いで二階に上がり、玄関脇に下ろす。
バッグから久しぶりに鍵を取り出して開け、電気を点けた。
「ひとりってやっぱ、寂しいな」
数年前まで「ひとりが気楽でいい」なんて思っていたことが、今では嘘のようだ。
カケルは昨晩の残り物を食べてから、シャワーを浴びた。
一連の流れ作業が終わるとすっかりやることがなくなり、手持ち無沙汰になった。
そうなったとき、やることはひとつ。
コミックを読みふけよう。
調子の外れた鼻歌を風に靡かせながら、カケルは自転車を押し公園橋を渡っている。
足元を照らす控えめな照明は、相変わらず過去を誘ってくる。
それすべて忌々しいものばかりで、足取りをひたすら重くさせるけれど、今日はなぜか、一味違う。
気分がいいのは、ちょっとした優越感。
イツキは店に帰ってからも、カケルにべったりだった。
商談を終えたマスターが両手を差し出しても抱きつこうともせず、カケルの手を握っていた。
完全にふて腐れたマスターはイツキよりも幼く見え、叔母に「だらしない」と叱られていたくらいだ。
一日の終わりが、とても、和やかだった。
途中厨房に入れずやきもきしたけれど、それさえも今に至るまでの、伏線のようなものだったに違いないと思える。
そんな心の余裕。
余白を残して一日を終え、明日を迎えるのは、幸せなことだ。
幸せなのだ。
幸運がなくても。
公園橋を渡りきる。
アパートを見上げるといつも中村が待っている部屋に明かりはついていない。
わかってはいたものの、気落ちした溜め息が出てしまう。
いつものように自転車を担いで二階に上がり、玄関脇に下ろす。
バッグから久しぶりに鍵を取り出して開け、電気を点けた。
「ひとりってやっぱ、寂しいな」
数年前まで「ひとりが気楽でいい」なんて思っていたことが、今では嘘のようだ。
カケルは昨晩の残り物を食べてから、シャワーを浴びた。
一連の流れ作業が終わるとすっかりやることがなくなり、手持ち無沙汰になった。
そうなったとき、やることはひとつ。
コミックを読みふけよう。