〈BL〉一時の幸福(しあわせ)〈短編〉
翌朝、スマホの電源を
入れると母さんからの
着信とメールが十件ずつきていた。

ガキじゃねぇんだからさぁと
苦笑いしつつ、 メールの返信をした。

「悪い」

いきなり、顕正が謝った。

何に対して謝っているんだろうか?

「おばさん、心配してんじゃねぇか?」

あぁ、そういうことか。

納得したら、少し可笑しかった。

高校時代ならともかく、
二十七歳の息子の何を心配すんだか。

『大丈夫だよ』

玄関で靴を履きながら
言うと顕正も苦笑いした。

俺があまり早く歩けないため
車で家まで送ってくれた。

『ありがとうな』

「半分は俺のせいだからな」

夕食の後に
強請(ねだ)ったのは
俺なんだから
顕正は何も悪くない。

『だから、お前は
悪くないってーの』

家の玄関の方をチラっと見て
母さんが出てこないのを
確かめた後、俺は
身を乗り出して
運転席にいる顕正にキスをした。
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