〈BL〉一時の幸福(しあわせ)〈短編〉
『何で?』

いきなり
鍵を渡されたことに
頭がついていかない。

「お前は俺の恋人だろう」

顕正の口から“恋人”と
言われると嬉しい。

『ありがとう』

斜めがけのバッグから
家の鍵を取りだし、
そこに顕正がくれた鍵を付けた。

「じゃぁな」

窓を全開にして
唇にキスをしてから車を発進させた。

『ただいま』

玄関に入り、靴を脱ぎ、
リビングへ入る。

「あんたねぇ、
顕正君ん家に
泊まるなら泊まるで
メールくらいしなさいよね」

今度からはそうすと
適当に返事をして
手洗いうがいをしに
洗面所に行った。

俺はこの時、
幸せが続くと信じていた……

一ヶ月後にあんな目に
遭うなんて想像していなかった。

‡‡‡一ヶ月後‡‡‡

今日は顕正と夕食を一緒に
食べに行く約束をしていた。

ただ、仕事の都合で
遅くなるとのことだったから
学生時代利用していた
公園で待ち合わせを
することにしたのだが
それが間違いだった……

時刻は午後八時。

待ち合わせ時間まで
後二十分を切ったころ
それは起きた。

トイレに行こうとした時、
一人の少年とぶつかった。
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