〈BL〉一時の幸福(しあわせ)〈短編〉
何で!?

無意識の自分の行動に
頭の中はパニクっている。

「ほらな」

顕正が“男の顔”から
いつもの顔になって

ホッとしてしまったのにも吃驚だ。

「今日は帰るさ」

苦笑いの顕正は
ベッドから 立ち上がると
部屋を出て行こうとした。

『待て』

慌てて俺も立ち上がり追いかけた。

「怖がってるお前の
傍にはいられない」

先程までの苦笑いではなく、
悲しそうな顔で言われ
俺はそれ以上言葉が発せなくなった。

「じゃぁな」

それだけ言って、
顕正は帰ってしまった。

玄関の鍵を閉め、
自室に戻ると大声で泣いた。

こんなに、形振り構わす
泣いたのは何時振りだろうか……

‡‡‡三日後‡‡‡

今日の夜には
母さんたちが帰ってくる。

その前に顕正ともう一度
ちゃんと話をしようと思った。

あの日以来、顕正は
電話もメールもしてこない。

幸いなことにマンションの鍵を
俺はまだ持っていた。

家主がいないのに
上がり込むのはどうかと
最初は思ったが合鍵を
渡してくれたのだからと
昼間からマンションに向かうことにした。
< 16 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop