〈BL〉一時の幸福(しあわせ)〈短編〉
見合いから二週間後、
突然顕正に呼び出された。

『どうした?

お前から呼び出しなんて』

平静を装いながら
内心は焦っている。

あの時、目は
合わなかったはずだ。

「二週間前、
◆◆ってホテルに居たよな」

ますます、焦る。

それとも、気配でバレたとかか?

いや、漫画じゃあるまいし
そんなことあるわけない。

馬鹿な考えを払拭しようと
軽く首を振った。

しかし、此所で嘘を吐いて
後で母さんから
バレるよりはいいのか?

『居たよ』

観念して言った。

呼び出したってことは
結婚の報告でもされるんだろうか?

あの日、顕正は
滅多に着ないスーツを着ていた。

「何であんな所に居た」

見合いだったんだよ‼

心の中で叫んだところで
顕正に聞こえるはずがない。

ここは、素直に
見合いだったと言ってしまおうか……

『何で顕正がそんなに
気にするんだよ』

少し、いじわるをしてみる。

まぁ、ただ単に
訊いてるだけだろうけど。

「お前が、スーツなんて着てたから」

それは、お前も
一緒じゃねぇかと言ってやりたい。

『見合いだったんだよ』

結局、俺は応えていた。半ばやけくそで。
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