絶対ダメな恋 〜偏見の世の中を生き抜いて〜上
胸の鼓動が早くなるのがわかる。

落ち着け…。

今までこの質問をされたことは、何回もあった。


同じことを言えばいい。

―親がホント厳しくて、僕と言わせられるようにしつけられたんだって。

「俺達は、俺とか言うじゃん?一瀬も俺って言えばいいじゃん。」

ってか別にいいじゃん。
自分のことを、どう呼ぼうが。

「あのっ…」
「ほら、こいつん家、マジで厳しくてさぁ〜!!僕って言うように教育させられるんだって〜!」


俊が笑いながらそう言った。

ちょっと重くなりつつあった空気が、一気に軽くなった。

「一瀬の親、そんな厳しいんだ?そういえば一瀬、控えめで、真面目で大人っぽいもんなぁ。」


藤田がそう言ったが、あまりに耳に入らなかった。

俊…。
なんで今、俊が答えたの?

なんか……

フォローされたって感じ。

俊は何も知らないはずなのに…。


昼食を終えて、自由時間ということで、近くにあった空き缶を見て、井上が缶けりを提案した。


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