絶対ダメな恋 〜偏見の世の中を生き抜いて〜上

認めたくない現実

―トン、トン…。


お母さんがドアをノックする音で、目が覚めた。


枕はまだ濡れている。


泣きながら寝てしまったみたいだ…。


外はもう暗かった。


「ごはん…できてるから。ここに置いとくわよ。」


あの日……。


僕が性同一性障害だと知ったあの日から。


お母さんと言葉を交わすのは、こういう時ぐらいになった。


「わかった…。」


そう返事をすると、お母さんの階段を降りる音が聞こえた。


ごはんはもう…冷えていた。



…この家族のように。
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