魔と剣の王国
それはあまりに唐突な言葉だった。


何があったのか頭がついていかず、フリーズするところだった


母が口を開いた


「ロン、ロンは一人で大丈夫?やっていける?」


「どうしたの?何の事言ってるのお母さん!?」


母はいつものような笑顔ではなく、どこか悲しい表情をしていた。


「………ロン、ごめんね。いつか……いつか帰ってきたら、ロンの好きな事いっぱいしてあげる。約束するわ。だから何も言わず、何も聞かないで待っていて。もし10年経って帰ってこなかったら………」






パッ


…夢か


またあの夢を見た
いつも同じ所で目が覚める



あの時お母さんはなんて言ったんだろう
もう、9年前のことなんて覚えてない
あれは確か私の誕生日だった気がする


でも誕生日にあの爆弾発言は凄かった。
エイプリールフールは4月なのにと、
母がボケてしまったのとばかり思っていた


「はぁ…」

小さく溜息を吐く
そういえば今はもう5月。
もうすぐ私の誕生日

正直、来ないで欲しい

思い出すから。



コンコン


ノックの音がする。誰だこんな時に



「は…「ローンー!おはよー!」


イラァ…

面倒くさいやつ来たよ。空気が読めないのか。どうせなら口を縫いつけてやりたい

「うるさい。どっかいけ。」

ぶっきらぼうに返す

「えーひどーっ折角起こしに来てあげたのにぃ」


「そんな事頼んでないだろう」



今こいつに一番会いたくなかったのに。
イライラする。腹立つから消えてほしい。



クアロ・ランロット。本名 覚谷 紅有(かくたに くあろ)
東洋人で、生まれると同時にこの国に越してきたらしい。



偶然同い年で私の誕生日に越してきたのはこいつだけだったから、父が

「折角だから側近にしちゃえばいいんじゃない?笑」

的なことを言い出したせいでこの様。
側近剣士として雇われている。



…まぁ悪くない見た目だが。


ストレートで襟足の跳ねた黒髪。
くりくりの大きな目。
スラっとしたスタイルに
魅力的な笑顔。
更に剣の腕前は特級クラス。

文句無し……な訳ない。



こいつはひたすら変態なのだ。
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