君の声


第二体育館。

バスケ部なら鍵さえ借りれば入れるんだけど、昼休みに練習なんて殊勝な奴はいない。
今は私と宮村の貸切状態だ。


「さっき雅子さんに電話した」

雅子さんってのは、宮村のお母さん。
女医でもある雅子さんは今、学会があって家を空けてる。
母子家庭の宮村は一人になるから、昨日は私の家に泊まりに来ていたというわけ。

「何の異常もないなら、心因性失声症って病気の可能性が高いんだってさ。
診ないと確定は出来ないらしいけど」

“しんいんせいしっせいしょう?”

「強いストレスを受けて声が出なくなるって言ってた。
ま、昼過ぎに出発して、今夜には帰ってくるって」

宮村は、起きたら声が出なくなってたと言ってた。
どこで強いストレスを受けたのか、疑問ではある。

“ナオちゃんはお母さんっていうよりお父さんだと思う”

「そんな話してないし、将来的になるとしてもお母さんの方だから」

教室での会話の続きをしてきた宮村の頭を叩いた。

どうしてこいつは私に父性を感じ取っているんだ。

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