君の声
「ん、なに?」
部長が去ってから肩を叩かれた。
振り向くと、ノートを持つ宮村がいた。
“部長と何話してたの?”
「大した話じゃないよ」
にこりと他人向けの笑みを作る。
いつもの宮村なら、ここで悲しげな表情をして引き下がるのに、今日は違った。
“お願いだから、部長と二人にならないで”
「なんで?」
“お願い”
久しぶりに見た宮村の必死な顔にびっくりした。
でも約束したわけだし、断るのも気が引ける。
「もう約束しちゃったし」
私は宮村のお願いを聞かなかった。