気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
第一章 秘密の庭園
「あ……はぁ……すごくイイ……蕩けちゃいそう……」
七月上旬の明るい日差しの中、屋上庭園の木陰のベンチで雑誌を顔にのせて、気持ちよく昼寝をしていた葛木(かつらぎ)透也(とおや)は、聞こえてきた女の色気たっぷりの声で目を覚ました。
(昼休み中にマジかよ……。いくらなんでも本社ビルの屋上だぞ)
透也は顔の上の雑誌を押さえながら、そっとベンチに片肘をついて起き上がり、声の聞こえてくる方を見た。藤棚の下に設えられた彼のいるベンチと背中合わせに置かれた一番遠いベンチに、艶やかなロングヘアを後頭部でまとめた女の後ろ姿が見える。
(わ、七瀬(ななせ)さんだ)
透也は反射的にベンチに伏せた。その色っぽい声の主が、株式会社エデュトイ・パブリッシング企画開発部の四年先輩に当たる七瀬凜香(りんか)だとわかったからだ。
(七瀬さんでもあんな声を出すんだ……。ってか、相手って誰?)
普段彼が見る凜香は、トリートメントのCMにでも出られそうなほど艶のあるロングヘアを後頭部できりりとまとめ、何があっても表情を崩さない。取引先の重役と会うときも大切なプレゼンテーションをするときもいつもクール。それが〝できる女〟というイメージを与えるが、同時に周りの男からは冷たそうだとも噂されている。いわゆる〝クール・ビューティ〟というやつだ。
七月上旬の明るい日差しの中、屋上庭園の木陰のベンチで雑誌を顔にのせて、気持ちよく昼寝をしていた葛木(かつらぎ)透也(とおや)は、聞こえてきた女の色気たっぷりの声で目を覚ました。
(昼休み中にマジかよ……。いくらなんでも本社ビルの屋上だぞ)
透也は顔の上の雑誌を押さえながら、そっとベンチに片肘をついて起き上がり、声の聞こえてくる方を見た。藤棚の下に設えられた彼のいるベンチと背中合わせに置かれた一番遠いベンチに、艶やかなロングヘアを後頭部でまとめた女の後ろ姿が見える。
(わ、七瀬(ななせ)さんだ)
透也は反射的にベンチに伏せた。その色っぽい声の主が、株式会社エデュトイ・パブリッシング企画開発部の四年先輩に当たる七瀬凜香(りんか)だとわかったからだ。
(七瀬さんでもあんな声を出すんだ……。ってか、相手って誰?)
普段彼が見る凜香は、トリートメントのCMにでも出られそうなほど艶のあるロングヘアを後頭部できりりとまとめ、何があっても表情を崩さない。取引先の重役と会うときも大切なプレゼンテーションをするときもいつもクール。それが〝できる女〟というイメージを与えるが、同時に周りの男からは冷たそうだとも噂されている。いわゆる〝クール・ビューティ〟というやつだ。
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