気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「今日は俺とのデートだから、七瀬さんのこと、呼び捨てにしていいかな?」
「そうね」
「もちろんタメ口でいいよね?」
「そうね」
「俺のことも〝透也〟って呼んでよ」
「そうね」

 生返事を繰り返していた凜香は赤信号で停車してから、ふと透也の方を見た。

「で、何の話をしてたっけ?」

 透也がやっぱり、と言うように小さく首を振った。

「聞いてなかったんだな?」
「〝だな〟?」

(いくら社長の息子だからって、四年も先輩の私にタメ口?)

 凜香が驚いて助手席を見ると、透也がニヤリとして言う。

「さっき、お互い呼び捨てにしてタメ口で話そうって言ったんだよ」
「え」
「だってデートだろ? それに凜香も〝そうね〟って賛成してた」

 文句を言う前に信号が変わってしまい、凜香はブレーキからアクセルに足をのせた。

「運転、慣れてないね?」

 透也に図星を指され、凜香は内心あわてたが平静を装って言う。
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