気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
彼は、今みたいに周囲の期待を受けて〝できる女〟を気取る凜香ではなく、中学、高校とバレーボールに明け暮れていたセミショートの彼女も知っている。そんな康人に、凜香は大学二回生のときこの店に連れてきてもらった。デートだと思って喜んだのも束の間、その日、彼に「涼香ちゃんと好きな男の話とかする? 涼香ちゃんが僕のこと……どう思ってるかとか……知らないかな」と訊かれたのだ。凜香が失恋した瞬間である。その後、姉と付き合い始めた康人に誘われ、何度か三人で食べに来たこともある。
「デートでよく来るの?」
透也の声で、凜香は思い出の世界から現実の世界へと引き戻された。
「え? ああ、うん、まあ」
(最後に三人で来てから七年経ってるけど、それまではよく来たもんね)
「ふうん」
透也が答えたとき、前菜のホタテのカルパッチョが運ばれてきた。オレンジジュースのグラスを軽く持ち上げて、形だけ乾杯をする。
(さすがに社長の次男なら高級食材を食べ慣れてそうだけど、どうかな)
凜香はドキドキしながら見ていたが、透也は一口食べて目元をほころばせた。
「さすがに凜香お勧めのレストランだけあって、新鮮でうまいな」
「デートでよく来るの?」
透也の声で、凜香は思い出の世界から現実の世界へと引き戻された。
「え? ああ、うん、まあ」
(最後に三人で来てから七年経ってるけど、それまではよく来たもんね)
「ふうん」
透也が答えたとき、前菜のホタテのカルパッチョが運ばれてきた。オレンジジュースのグラスを軽く持ち上げて、形だけ乾杯をする。
(さすがに社長の次男なら高級食材を食べ慣れてそうだけど、どうかな)
凜香はドキドキしながら見ていたが、透也は一口食べて目元をほころばせた。
「さすがに凜香お勧めのレストランだけあって、新鮮でうまいな」