気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
(呼び捨てなのは気になるけど、料理は気に入ってくれたみたいだし、よしとしよう)

 凜香はホッとして料理を口に運んだ。

 続くフルーツトマトの冷製カッペリーニは夏らしくさっぱりしていて食欲がそそられ、和牛ロース肉のグリル・赤ワインソースも柔らかくておいしかった。ドルチェのティラミスは相変わらず絶品だ。

「んー……やっぱりおいしい……蕩けるぅ」

 凜香は思わずうっとりつぶやいたが、透也にじっと見られているのに気づいて、あわてて言う。

「葛木くんもそう思わない?」
「透也だ」
「え?」

 透也に言われて凜香はきょとんとした。

「透也って呼んでって言ったのに」

 透也が不満そうに言った。すねたようなその眼差しがやたらと色っぽくて、凜香はドギマギしてしまう。

「あ、そうだっけ。うん、そうだった」

 必死で運転していたときにそういう約束をさせられていたことを思い出した。

「透也……かぁ。慣れないなぁ。透也くんじゃダメ? どうせ今日だけのことでしょ?」
「俺は今日だけのことにしたくない」

 透也に言われて、結香は瞬きをした。
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