気まぐれ猫系御曹司に振り回されて

 それからコーヒーショップでテイクアウトのコーヒーを買い、建物の外に出た。凜香はお土産の袋を抱えているので、コーヒーカップは透也が両手に持っている。ヤシの木が並ぶシーサイドのリラックススペースで、空いているベンチを探して並んで座った。

 凜香が大きな紙袋を二つ横に置くのを見て、透也が言う。

「ひとつ疑問なんだけど、そのお土産、どうするわけ?」
「ああ、姉の子どもたちにあげるの」

 凜香はアイスコーヒーのプラスチック容器を透也から受け取りながら答えた。

「へえ、凜香ってお姉さんがいたんだ」
「そうよ、二人姉妹。透也くんは兄弟はお兄さんだけ?」

 透也の兄の優也(ゆうや)が凜香の一つ年上で総務部長であることは知っている。ほかに兄弟はいないのかという意味で訊いたのだが、透也は不機嫌そうに顔を背けた。

「みんな知ってることだろ」
「まあ、そうだけど」

 優也は品行方正を絵に描いたような人だ。事務系の仕事をこなすのが得意で、仕事ぶりは堅実。副社長になるのも時間の問題だろう。その兄と比べられているとでも思ったのだろうか。

(比べたくてもぜんぜんタイプが違うから、比較のしようがないのに)
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