気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
 凜香が黙ってアイスコーヒーを飲んでいると、透也が言った。

「凜香の休日はいつもこうなの? 彼氏は不満に思わないわけ?」

 凜香の休日がだいたいこんな感じというのは確かだ。こういう子ども向けのイベントにはたいてい足を運ぶ。どういうものが売れているのか、商品を手にしたときの子どもの反応はどうか。そういうものを直に見ることができるからだ。

 だけど、彼氏がどうのというところは事実とは違っている。

 凜香はストローから唇を離した。

「あのね、この際だからはっきり言っておくけど……私、特定の相手はいないから」
「へえ」

 透也がわずかに眉を上げた。

(できる女が独り身だとおかしい……かな?)

 そう思って思わず訊いていた。

「おかしい?」
「いや、そんなことない。ますます凜香の秘密が知りたくなっただけだ」
「ひ、秘密?」

 透也が目を細めて凜香を見た。その探るような眼差しにドギマギしてしまい、それをごまかすように凜香はさっと立ち上がった。

「私よりも透也くんの方が秘密をいっぱい持ってそうだけど」
「そうかな」

 透也が立ち上がって凜香に並んだ。
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