気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
　成実の後方で腕を組んで見守っていた父親の康人が近づいてきた。

「おはよう、凜香ちゃん」
「おはよう、康人さん。成樹くんは？」
「友達とサッカーしてるよ」

　康人が顔を向けた方を見ると、隣のグラウンドで幼稚園や小学生の子どもたちがサッカーをしていた。

「朝から元気ね」

　凜香は笑って、木箱とリュックサックを地面に置いた。

「じゃあ、オルゴールをつけるね」
「うん！」

　凜香は木箱を開けて羽根のついたオルゴールを取り出し、ドライバーを使って市販の取り付け金具ごと自転車のかごに付けた。

「これでオッケー」
「ホント？」
「走っていいよ」

　凜香の返事を聞いて、成実が足で地面を蹴りながら自転車を進め始めた。プロペラがゆっくりと動いてモーターが回転し、陶器製の小さな家の中から〝イッツ・ア・スモールワールド〟の曲が聞こえ始める。

「きゃあ、すごい！」

　成実が笑いながらペダルに足を乗せてよろよろと進んだ。凜香とは違って柔らかい髪質の姉と同じ、少し明るくふわふわした髪がピンクの帽子から覗いている。
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