気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
(ようし、凜香をつかまえてやる)

 そう思ったが、当の凜香は全速力で逃げている。

(社会人フットサルチームに入って鍛えてる俺を舐めるなよ)

 透也のずいぶん前を走っていた凜香と徐々に距離を詰める。離れていた背中が近づき、大きく揺れるポニーテールに手が届きそうだ。

(仕事でも……仕事以外でも……凜香に追いつきたい)

 透也が手を伸ばしたとき、目の前に成樹が飛び込んできた。

「凜ちゃん、逃げろ~」

 どうやら透也から凜香を逃がすつもりらしい。透也は急ブレーキをかけ、成樹をふわりと腕の中に抱いた。

「つかまえた!」
「わーい、次、僕が鬼!」

 そう言って成樹は透也の腕から抜け出し、凜香を追いかけていく。鬼が成樹だとわかると、凜香が走るスピードを緩めた。

「凜ちゃん、つかまえた!」

 成樹は凜香の背中に飛びつき、凜香が首をねじって成樹を見下ろしながら笑っている。

「わあ、つかまっちゃったぁ」

 透也は立ち止まったまま両手を腰に当てた。

(それ、俺がやりたかったのに)
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