気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「ねえ、もうわかったでしょ。童心に返って子どもと一緒に遊ぶの。そうすれば透也くんだってもっといい企画ができると思う。他社にない企画をしようとする意気込みだけは買うから」
「もう少し、凜香と話がしたいんだ。だから送らせてほしい」

 話以上のことも望んでいたが、その気持ちは押し殺して言った。少し逡巡してから凜香が答える。

「わかった。じゃあ、お願いします」

 透也は凜香を促して駐車場に向かった。駐車場に入ったところで、ポケットからキーを取り出し、愛車に向ける。リモートコントロールでエンジンがかかり、冷房も作動したため、透也が助手席のドアを開けたときには、車内はいい具合に冷えていた。

「どうぞ」
「ありがとう」

 凜香が乗り込むと透也はドアを閉めて、運転席に回った。

「何か聴く?」
「そうね。透也くんはどういうのを聴くの?」
「俺じゃなくて凜香が好きなのを聴きたい」
「えー……どんなCD持ってるの?」

 透也は手を伸ばしてグローブボックスを開けた。中にはポップスからジャズ、映画音楽のサントラにクラシックまで、さまざまなジャンルのCDが入っている。

「わあ……多趣味なのね」
「仕事に活かせないかと思ってるだけ」
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