気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「課長は確かにひどいことを言うわよね。でも、怖がらないで。私もね、姪や甥と一緒にいて気づいたんだけど、子どもって本当に発想が豊かなの。大人が思いつきもしないことを考えてる。だから、新しいアイディアがあったら、怖がらずに伝えてみて。また課長がおかしな発言をしたら、私がビシッと言ってあげるから」

 凜香は言って笑った。

「ありがとう。なんか……凜香に認められるとすごく嬉しいな」
「それはお世辞? 実は私ね、今内心ドキドキしてるの。私の〝アイディアの源泉〟を教えちゃったから、ライバルが一人増えたんじゃないかって」
「凜香にライバルって呼んでもらえるほど……俺はまだ……」

 透也が照れたように後頭部を撫でた。

「謙遜しないで。〝ミミズ・コンポスト〟は付録にはならなくても、きっと『こどもサイエンス』の特集に採用されるわ。だから、自信持ってがんばりなさい」
「ありがとう」
「じゃ、また明日、会社でね」

 凜香は今度こそシートベルトを外したが、透也も自分のシートベルトを外していて、凜香が気づいたときには、透也が彼女の顔を囲うように背もたれの肩に両手をついていた。
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