気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
(へ、変な声、出さないようにしなくちゃ)

 体が震えそうになるのを懸命にこらえた。やがて透也の手がハーフパンツのウエストから中へと滑り込む。

「え……ちょっ……きゃ」

 自分でも触れたことのない場所に透也の指先が下りてきて、凜香は反射的に膝を閉じようとしたが、透也の逆の手に止められた。ショーツのクロッチをずらされ、指でなぞられて、凜香の脚がビクリと震える。

「ふっ……」
「体の方は俺を受け入れる準備ができているようだけど」

 透也に低い声でささやかれ、凜香は閉じている目をさらにきつくつぶった。

 彼の指先が触れる箇所から甘やかな刺激が伝わってきて、凜香の意思などお構いなしに四肢が震え、呼吸が浅くなる。

「や……恥ずかし……」

 凜香が小さく首を振ったとき、透也が体を起こした。彼の指先から解放された場所が、もどかしげに疼きを訴える。

「俺じゃダメなのか?」

 凜香が潤んだ目で見返した透也は、悲しみと怒りのない交ぜになったような表情をしていた。

「俺じゃ屋上の男には勝てないのか? 俺じゃ凜香を感じさせられない?」
「違う……」

 言いかけた凜香に、透也はやるせない笑みを見せた。
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